リレー・エッセイ
 
いろいろなキューバが見えてくる
 
Vol.2 「E-メールで キューバ便り」 No.4

森 幹雄 (ハバナ大学大学院在院)
 
2000年12月19日
林間学校とハバナの新しい銅像

 今回も前回と同様に、ここ数日にキューバで見聞きしたことについて述べたいと思います。
 まずはこの国で行なわれている林間学校について。
 林間学校というとキャンプファイアーがあってマイムマイムを踊って、というレクリエーション的なイメージがあるかもしれませんが、キューバでの林間学校にこの2つはありません。あくまでもキューバの教育システムの大きな柱として存在しています。
 林間学校と記したのは便宜上のものであって、こちらではエスクエラ・アル・カンポと呼んでいます。日本語でエスクエラは学校、カンポは田舎とか郊外ですから、邦訳するとどうしても林間学校ということになります。
 日本のそれと違うのは、まず期間です。約1カ月もの長期間にわたって、人里離れた田舎や山間部にて共同生活を行なうことになります。前述したように教育システムの一貫ですから、基本的には全員参加です。例外はありますが、それは医者から体力的に参加は無理との判断が下されたケースぐらいです。
 さて、それではそのような場所でいったい何をするのかというと、ずばり農作業をやります。場所によって作業内容が違うので一概には言えませんが、タバコの葉やコーヒー豆、野菜、サトウキビの収穫などを行ないます。
 対象は中学2年生から高校3年生まで。コンビニエンスストアが存在しないキューバのことですから、人里離れた田舎というと、掛け値なしに、一切から隔離された何もない田舎ということになります。つまり、そのような状況で共同作業を行なうことによって、自立心とか協調性が養われるというわけです。加えて食料がどのように生産されるかを学ぶいい機会にもなりますから、食料を大事にする気持ちも芽生えるというわけです。
 まあ、実際に参加してみると、宿舎はお世辞にも清潔とは言えないし、夜中には蚊の大群に悩まされるし、食事もかなり辛いものがありますが、子供たちの生き生きとした笑顔を見る限り、それも彼らにとってはよい経験といえるのかもしれません。
 ちなみに、キューバの義務教育は日本と同様で小学校6年、中学校3年ですが、普通高校(こちらでは大学進学課程高校と呼びます)は基本的に全寮制で、田舎にあります。カリキュラムはやはり午前中が農作業、午後が授業というものです。
 ハバナ大学に在籍していると、周りの大学生が妙に老成しているので驚かされますが、これは彼らの大半が徴兵(男性のみ、女性は希望者のみ)を終えているからという理由だけではなさそうです。
 さて、林間学校に参加した以外にも、各地のラム酒やビールの工場なども見て回りましたが、これはまた別の機会に譲るとして、後半はハバナの街角に続々と出現する観光スポットについて述べることにします。
 最近キューバで話題になったのはジョン・レノン公園です。
 革命初期には「快楽主義者」の烙印を押されて、いわば敵性音楽の位置付けで捉えられていたビートルズですが、いやはや隔世の感があります。整備された美しい公園のベンチに設置されたジョン・レノンの銅像はまるで実物のようで、あらたな観光スポットになりつつあります。
 でも、どうしてジョン・レノンなのか。そのあたりの事情をキューバ人に尋ねてみると、「晩年の彼は、従事していた平和運動がCIAから疎まれたために有形無形の妨害を受けた。いわばキューバ人の同朋なんだ」とのこと。
 興味のある方はぜひ訪れてみてください。住所は以下の通りです。
 Calle#15/4 y 6, Vedado.
 また、ユネスコの世界遺産に指定されている旧市街にも近々サムライの銅像が建つ予定です。これは伊達正宗の密使である支倉常長六衛門が1614年7月23日に日本人として初めてハバナを訪れたことを記念したもので、旧市街の修復を担っている歴史学者エウセビオ・レアルが大の親日家ということもあって計画されたものです。
 出帆の地である石巻市と旧市街は姉妹都市関係になるという話もありますが、美しいハバナの街の一角にどんな銅像が建つのか、とても楽しみです。
(C)Photo by Mori Mikio 2000.
1968年博多生まれ。
青山学院大学文学部卒業後、ペルー国立人類学考古学研究所およびホンデュラス国立考古学歴史学研究所勤務を経て、現在はハバナ大学大学院で革命史を勉強中。
 
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