リレー・エッセイ
 
いろいろなキューバが見えてくる
 
Vol.4 「教育優先国キューバ共和国を訪ねて」 その1

田口教育研究所所長 田口 正敏

(田口教育研究所については文末をご覧ください)
 
クラシックカーが町のあちらこちらに
黄色のダッジのオールドカー
 1月の下旬大雪の降る中、成田空港を離陸した。アメリカのヒューストン市とメキシコの大リゾート地カンクン市を経由してキューバ共和国に入国した。カリブ海に浮かぶ島、常夏のサルサリズムが聞こえてきた。人口1千百万人、思想家ホセ・マルティのもと、チェ・ゲバラやカストロ達が勝ちとってきた「ちょうどいい社会主義国」が達成され、継続革命が進行している国家である。医学の面でも相当な発達を遂げた国である。その指標の1つに乳幼児の死亡率がある。出生してから1年以内に死亡する人数は約1000分の7であるが1959年の革命当時は約60であった。この約7という数字はアメリカと同等。ドイツでは5、フランスでも5である。この様な医療水準の発達は革命前のバチスタ独裁政権下の悲惨な国民の怒りからきたものであろう。一方医師の数であるが、6万5千人もおり国民170人に1人の割合で世界的にみても高水準である。


町のあちこちにゲバラの肖像
1月下旬のハバナの広場、ここは常夏
 この国はアメリカによる経済封鎖がおこなわれており、経済支援をおこなっていたソ連の崩壊時にも多大な経済危機を経験してきた国である。しかし、教育面では小・中・高・大学などの学習システムなどはすべて国家補償として無料である。同様に医療分野の臨床医療も幼児から老齢者まですべて国家補償として無料である。
 町の中を歩いてみると、なんとクラッシックカーが続々公道を走っているではないか。1940年〜50年代のなんと50年以上前の「ダッジ」と「フォード」が多いようだ。双方ともアメリカ製であるが、部品の供給はどの様になっているのであろう。おそらく器用な彼らのことであるから自作品であろう。







ペドロ・マリア・ロドリゲス小学校正門
 第1番目の訪問校、ハバナの「ペドロ・マリア・ロドリゲス小学校」を訪問した。学年は日本と同様で、1学年から6学年までが存在する。生徒数は総勢434人で、1クラス20〜25人の生徒数である。午前中の授業は8:00〜12:45まで、昼休みを挟んで午後は2:30〜4:20までの授業がプログラムされている。学校には夜の7:00まで居ることが出来るそうだ。日本との比較点としては、週に1回は「個人の興味のある内容、または芸術科目」が実行されている。総合学習や午後の農作業実習などは大きな相違点であった。また、性教育は幼稚園のころから実行されているようで、その授業内容、特にイントロダクションの部分に興味があるが、次回キューバに行く時のテーマとなってしまった。



日の丸とキューバ国旗で国賓待遇
3人の小学5年生。
多民族が共存するのが確認できる
 子どもたちは顔つきを見ても多人種が存在することが一目で解る。ただし、東洋人系はまれであるようだ。日本国旗とキューバ国旗を振って歓迎に出てきてくれた生徒達に学校の感想を聞いてみると、「学校のシステムが好きです」「先生達が多くの興味を与えてくれます」「自分たち一人一人の考え方をうまく誘導してくれます」「先生達が僕達にどんな悩みがあるのかをいつも聞いてくれます」すばらしい回答ばかりが出てくるので「先生方、しばらく耳をふさいでいてください」と要求をだしてその後の回答も「色々な研究テーマを出してくれるのが嬉しい」という回答。そして圧巻は「学校で好きでない事はなんですか」の質問に「好きでないのは授業の終わる事」との回答であった。日本からの教育視察と言う名目を我々はかぶっているため、マユツバもので小学生の回答を聞いていたが、どうも98%ぐらい本当のことを言っているらしい。まして「自分たち一人一人の考え方をうまく誘導してくれます」の回答など正に「教え込む」ではない「エデュケートする」の実践なのではないだろうか。また小学校内のシステムとして5年生と6年生ではサブティーチャー制度を取り入れて、教室内に2人の教員がクラス授業を担当することになるそうだ。
左から生徒指導・教頭・校長。
教職員も多民族
 今回この小学校だけを見ても日本教育との「大きな差」が見えてくる。「教育」が人間関係の最重要点と考えての「芸術」・「健康」そして「個性」の3本の柱を建て、国家樹立の原点を築きあげているのが感じ取れた。また、子ども達からもらったメッセージの絵はなんと地球を色々な子ども達で囲んでいるではないか。この国のテーマは「地球」と「子ども達」なのかもしれない。
(C)Photo by M.Taguchi 2001.
(続く→その2

子ども達から贈られた色紙
(訳文) 日本の友人達の兄弟のようなご訪問に対し、大きな歓びをこめてご挨拶致します。
よくいらっしゃいました!
私達ペドロ・マリア・ロドリゲス小学校のピオニールのこのささやかな思い出を、愛情をもってお受け取り下さい。
(近藤彰利氏 訳)

田口教育研究所

田口教育研究所は「不登校・中退者のための新しい学びの場2001」(日本評論社、2000年11月発行)をはじめとする教育現場紹介や「不登校・中退体験発表会」、「不登校・中退進路相談会」および「教育問題電話相談会」など、現在の教育問題に関わる多彩な活動を行っています。
また、「親のための勉強会」や閉じこもり青少年の相談も、専門のスタッフにより行っています。

問い合せ先
田口教育研究所 田口正敏
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