リレー・エッセイ
 
いろいろなキューバが見えてくる
 
Vol.4 「教育優先国キューバ共和国を訪ねて」 その2

田口教育研究所所長 田口 正敏

(田口教育研究所については文末をご覧ください)
 
(写真1.)カリブ海に沈む夕日。ゆっくりの時間と宇宙を感じる。
 キューバの雰囲気にだいぶ慣れてきた。大自然の環境が身近にある。大海の中の細長い国、一年中の温暖な気候、これらの環境条件によって国民性は形成されるのであろうか。この自然の中で地球と宇宙を意識して、そこから人間の生活・喜怒哀楽を楽しんでいるのだろうか。
 かの文豪、ノーベル文学賞を受賞したヘミングウエイがこの国を愛し、心を解き放った理由も、この様な風土と民族土壌に起因しているのかもしれない。
 ゆっくりと大海に沈んでいく太陽、涼しげな風たちが乱舞はじめた午後7時。(写真1.)
 ごくあたりまえに自然現象に感謝してしまった。この地球で生まれ、ほんの短い人生を有意義に生きていかなければ「そん」であろう。民族間の抗争や、金銭面での抗争または、権力争いでの抗争が歴史の上では多く残されてきてしまった。これらのほとんどは支配システムが確立しているが為の、支配者側の論理が前面に出現したからであろう。しかし、「ヒト」のため、子ども達のためには、まだまだ戦わなければならないことが多すぎるのかもしれない。
(写真2.)レストラン「ラ・テラサ」にて昼食。老人達のアクティブな演奏。壁にはへミングウエイの写真が多数。
 昼食時間に市内の観光として有名なレストランへ案内された。(写真2.)
 
店内はおそらく海外からの観光客ばかりなのか、満員状態であった。そのレストランも収容人数が大きめだったので、おそらく国営であろう。食材はキューバでは高級品であるイセエビや子エビなどが使用されていた。これらの食材は、マーケットを数軒のぞいてはみたが、一度も見ることはできなかった。高級料理店や、海外へ、外貨獲得のために流通しているのではないだろうか。


(写真3.)町の中には教会が多数存在。宗教は多数存在する。
 この昼食後、市内を通過途中に目にしたものは、なんとキリスト教の教会であった。(写真3.)
 
しかも、複数のキリスト教系の教会を目にした。通訳に聞いたところ、革命後も宗教はどのような宗派であろうと認定されているということであった。少し不思議と思ったものである。それは、国家統治として宗教は巨大な1本の柱を形成するはずであるから????


(写真4.)中学校へ到着と同時に歓迎の合唱。多民族であることがすぐ解る。
 そうこうしている間に第2番目の目的地の中学校に到着した。「ジュリオ・アントニオ・エラ中学校」であった。到着時に歓迎の歌で出迎えてくれた。(写真4.)
 もちろんここでも多民族の子供たちの顔。クラスの人数は30〜35人の教室が12室、実験室が3つ、そして「労働教育教室」(?)が2つある。?マークを付けてしまったが、実は今になって思うことはこの労働教育教室とは何なのか、ということ。今となって一番興味が湧いてきているところである。
 授業時間は朝7時30分からはじまり、夕刻の5時までである。農業実習や芸術科目、そして、多岐にわたるスポーツ実習。この3点の比重はわが国とは大きく異なる所であろう。また日本と大きく異なる点として、テレビ番組の企画・放映やFM局の解説・送信なども現実社会とつながりをもって運営されている。また、植物から医薬品の原料となる化学物質を精製するなどのことも行なわせている。子供たちの興味あることを育て、多くの体験実習をさせ、そのそれぞれを個人個人の肥やしにしていく。義務教育を行なっている間に、個々人に好きなことを発見させ、次のステップ゚につなげていくという教育本来の仕事をしている。
(写真5.)教材ビデオテープを見て多数の教師が討論会。
 このような態勢を作っているために、なんと、選挙権は16歳から認められている。ポジティブな発想ではないか。同様のシステムとして、9年間の義務教育を終了しないと公務員には成ることが出来ない。この2つのシステムに、青年の成長に対して、国家が責任を大きく持っていこうとする方向性が見えている。教師たちは授業の合間合間では(写真5.)のように、教材となるビデオテープを見てはディスカッションを重ねて、次の授業の役に立てようとしている。(教師がビデオテープで授業をサボる道具としての使用ではない。)
 夏休みや冬休みも宿題は豊富にでるそうである。教室の授業を見学しに行くと、数学分野の立体型の2次元分割をやっていた。ガイド役のマリオが「これ、僕おぼえているよ。こうでね、こうでね」と細かい説明がはじまった。(写真6.)他の教室を見学にいくと、やはり健康そうな子供たちでいっぱいの教室の壁にカストロの演説中の写真が掲げられていた。(写真7.)
(写真6.)中学2年生で立体図形の展開。
(写真7.)クラス内はやはり多民族。教室の壁にはカストロの演説時の写真が。

 こんな中学生たちに質問をした。「学校は楽しいですか」「なんで学校に来ているんですか」
 これに対して、「自由の国になりたいから学校にきています」と中学校の2年生の女の子が回答してきた。うれしさで眼の周りが熱くなってきた。一方、日本の子供たちだったらばなんと回答するだろう、と心配ごとのみやげものもできてしまった。
 これらの義務教育の終了後、高等学校へ進学する子供たちは約50%ほど、専門技術者養成学校へは35%ほど進学するそうだ。どちらにしても、わが日本とは大きく異なる教育体制を勉強できた。
(C)Photo by M.Taguchi 2001.
(続く→その3

田口教育研究所

田口教育研究所は「不登校・中退者のための新しい学びの場2001」(日本評論社、2000年11月発行)をはじめとする教育現場紹介や「不登校・中退体験発表会」、「不登校・中退進路相談会」および「教育問題電話相談会」など、現在の教育問題に関わる多彩な活動を行っています。
また、「親のための勉強会」や閉じこもり青少年の相談も、専門のスタッフにより行っています。

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