| いろいろなキューバが見えてくる | |
| Vol.8 持続可能な国づくりへの挑戦 |
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| 東京都産業労働局農林水産部農業振興課主任 吉田太郎 | |
「100万トン以上の化学肥料、2万トン以上の農薬、200万トンの家畜飼料を一夜にしてなくしてしまったのです。75000台あったトラクターも石油不足で止まってしまいました」。 農業省のホセ・レオン・ベガ国際局長は当時を振り返ってそう語る。輸入食糧の半減に加え、国内生産も年々低下し、94年には以前の60%にまで落ち込む。 石油が半減、農薬や化学肥料もアメリカの経済封鎖で以前の20%しかない中で、どうするか。革命以来の石油や農薬に依存した近代農業を捨てること。残された手法はひとつしかなかった。カストロは農業のすべてを「オルターナティブ」な方法で行うよう命じ、国の総力をあげた有機農業への転換が進められる。
土づくりにはミミズも活用され、180を越す各地の製造センターが毎年10万トンものミミズ堆肥を生産している。手作業に依存するローテク生産だが、世界に6000種ある品種の中から自国の風土条件に最も適し、生産効率が良い二種を選びだした。その生態や腐植の化学成分、各作物毎の施用量も詳細に研究されている。
ニンニク、タマネギ、キンセンカなど、植物から抽出したエキスから農薬を作る研究も進んでいる。中でも注目株は、インド原産で中南米やカリブ諸島にも自生しているニームである。実を集めて乾かし、種子を取り出し、皮のまま細かく砕けば、それがそのまま農薬となる。畑のすみに一本植えておけば、自家製の農薬がいつでも手に入る。また、サトウキビのプランテーション農業が進展する以前には行われていた輪作や混作も復活した。大豆やササゲなど豆科作物と一緒に作物を植えることで、生態系のバランスが保たれ害虫防除や雑草抑制、連作障害の回避に役立つ。
窮余の策で進められた有機農業だが、97年には、総生産量ではほぼ以前の水準まで回復し、その後も伸び続けている。生産量や生産効率を詳細に調査したモデル農場の研究事例では作業労力では半減、産出量は2割以上アップし、投入エネルギー効率では以前の倍以上となっている。 いまだに経済危機は続いているとはいえ、結果として一人の餓死者も出さなかった。キューバの人々は、有機農業は近代農業よりも収量や効率が悪く国全体の食糧自給などは不可能だという農業関係者のドグマを見事にくつがえしてみせた。 キューバの有機農業を調査したスタンフォード大学の科学調査団は「人類史上における最大の実験」と評しているが、まさに国をあげた壮大なプロジェクトXの成功だったと言えよう。 Photo by Taro Yoshida(C)
(続く→第3回) |
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| 吉田太郎さん責任編集<キューバの有機農業> |
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