| いろいろなキューバが見えてくる | |
| Vol.8 持続可能な国づくりへの挑戦 |
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| 東京都産業労働局農林水産部農業振興課主任 吉田太郎 | |
農業省のフォセ・レオン国際局長は言う。 「ですから、1993年の10月から協同組合を作って、これを働きたい人に無償で貸与する制度を作ったのです。いま、新しく作られた組合は農業省のものだけでも1558あり、150万ヘクタールを管理しています。また、タバコやコーヒー生産を希望する個人にも農地を提供しました。こうした改革の結果、現在、国が所有している農地は3割ほどに減り、残りは農家や協同組合が管理するようになったんです」。 改革後のシェア率は、国営農場33%、協同組合が63%、自営農家が4%というように、以前と逆転して民間が過半を占めているのであるから、これはすさまじい農地改革である。 キューバが革命以来初めてとも言うべき一大改革に着手せざるをえなかったのはちゃんと理由がある。 直接の理由は、経済危機で農薬や石油が途絶したためだが、それ以外にも大規模農場は、土壌の固結、水質汚染、生物種の減少、土壌侵食といった様々な弊害を産みだしていた。たとえ輸入物資が確保されたとしても、環境上の制約から、大規模近代農業は、早晩ゆきづまることは識者の間では見えていたのである。 その上、ソ連方式の大規模農業では、農業者は農作業を部分的に請け負う作業員にすぎず、作付や収穫も別々に行なわれ、作物を育てる喜びもわかず、生産効率が低下していた。1980年代には、国の全投資額の約3割に相当する莫大な投資が行われ、大量の化学肥料やトラクターが使用されたにも関わらず、投資効果はわずかしか見られず、生産は落ち込み続けた。「生産するのにどれだけのコストがかかったか」ではなく「どれだけの量を生産したか」を基礎とした政策が取られたためだった。 シエゴ・デ・アビラ州のある酪農国営農場の場長は、当時をふり返ってこう説明する。 「私どもはコストを全く気にかけませんでした。どんな値段になろうが、かまわず生産したのです。タンクが満杯になるともっと入るようにバルブを開け、ミルクを地上に流してタンクを空にし、またミルクを入れたのですが、それでも、その全部に対して支払いがなされました」。 生産物を排棄するという、ばかばかしい経営が可能であったのは、ソ連からの潤沢な補助金があったからであった。いくら生産が低下しようが、赤字経営に陥いろうが、その損失はすべて国からの補助金によって補填されていたのだった。
(1)経済効率の向上とコストダウン 国営農場時と比べ、生産者たちは、生産量や生産コスト、組合の収益に大きな関心を抱くようになり、コスト削減に努力した結果、無駄な損益が減り黒字組合が増えてきている。 (2)自己管理と生産者の生産への参加 生産者は、それぞれの土地に責任を持つようになり、組合の運営や販売方針についても関わるようになった。 (3)有機農業の進展 経済危機による資源不足の中で経営を安定させるために、有機農業を採用する農場が増え、伝統的なエコロジー農業への転換が進んでいる。 以前は生産した牛乳をタンクから捨てていたという国営農場も新しい組合となった。「1994年に国営農場は3つの小さな組合に分割されました。より利益があがるようになり、生産量は以前より少ないものの、より効率的に生産できています。かつて13名いたポジションは3人に削減され、1999年には、コストを削減することで初めて利益をあげ、2000ペソをメンバー間でわかちあいました」。 もちろん厳しい経済危機の下にあるキューバでは、利益をあげている組合は半数にすぎず、とりわけ砂糖生産組合では23%にすぎない。管理と経営のまずさで採算があわなくなるケースも少なくなく、すでに100以上の組合が解散されたり別の組合に吸収されたりしている。だが、この経済危機の最中に半数がなんとか経営を維持し、経営破綻したものも100そこそこしかないというのは、逆に言えば驚くべき程の成功率である。そのことは、補助金づけでなおも青息吐息の多くの日本の農協と比較してみても明らかだろう。小規模化し、競争原理を導入することで農業者のやる気を引き出し、国全体の生産性をアップしていこうとするキューバの農地改革はうまく機能しつつあるともいえる。 いまだに日本の農政の基本となっている考え方は、規模拡大によるコストダウンであり、省力化と機械化、農地流動化による規模拡大が、農政の柱とされている。だが、それはかつてのキューバと同じく、石油資源や化学肥料・農薬が外部から投入され続けうるという条件を想定して立てられている。有機農業や環境保全型農業には、自ずから風土条件の制約に応じた適正規模があるはずなのだが、こうした切口からの検討がなされているとは言い難い。機械化が進み土から離れる程、農業者の生産意欲も失われるという「生きがい」の面からの規模論が論じられたという話も聞いたことがない。 筆者がかつて訪れたドイツの大規模有機農場は、東欧からの雇用労働者により運営されていた。売り上げ額を気にしつつ、「認証基準をクリアーしている」と自慢げに語る農場主は、農民というよりもマネジャーそのものであった。そして、農場主の命令のままにキャベツ収穫の単純労働を黙々とこなすポーランドからの移民作業員にも、土と格闘する中で喜怒哀楽するという農民の香りが全く感じられなかった。経済効率性をつきつめれば、有機農場といえども規模拡大は避けられない。農業法人経営であれ、株式会社による経営であれ、それは「規模」が持つ宿命とも言える。
Photo by Taro Yoshida(C) (続く→第4回) |
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| 吉田太郎さん責任編集<キューバの有機農業> |
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