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 国連人権委員会にキューバ非難決議案提出か
 
輝くアメリカ独立宣言と
 地におちたモラル―キューバ政策の大転換を!

樋 口 篤 三
98年よりの日本生協交流団の組織者、事務局長、顧問。日本キューバ文化交流センター(仮称)を準備中


 1776年のアメリカの「独立宣言」は、人類の人権史上に輝く金字塔であった。その3年後の自由・平等・博愛のフランス大革命の「人および市民の権利宣言」は、その思想を典拠としてひきつぐものであった。
 だが、いらいニ百余年、その国々の労働者や農民と共に、アフリカ、アメリカ大陸、アジア諸国は帝国主義宗主国により植民地従属化されて、言語に絶する搾取、抑圧、隷属化を強いられ、人権は全くなく食べるにことかいて、餓死、病気などで民衆は息もたえだえの状態におかれた。
 科学文明の発達した20世紀は、宗主国のひとにぎりの支配層の豊かさの上に第三世界の人民の生活と権利は人間扱いされなかった。その植民地の再分割をめぐった第一次大戦、そして日独伊ファシズムブロックが先制した第二次大戦は死傷者五千万人以上という大惨害をもたらした。

 世界人権宣言と正反対の現実
 恐るべきこれらの事実と反省の上に、1948年12月、国際連合第3回総会は、歴史上はじめての「世界人権宣言」を採択した。
 すでに米ソ冷戦構造がはじまり、きびしい対立下にもかかわらず加盟56ヵ国のうち49ヵ国が賛成し棄権9ヵ国、反対ゼロという画期的なものであった。
 だが現実政治はその逆であった。
 ソ連は、国内のいちじるしい人権侵害と共に、東欧諸国を従属国とし、独立と解放を求めるユーゴ・スラビア、ハンガリー、ポーランド等の人民と政府を抑圧し、アフガニスタンにも侵攻した。
 アメリカは、はるかに太平洋をこえたベトナムに反共産主義をかかげて50万人の大軍を派遣した。が当時の軍事指導者マクナマラ国防長官が、90年代に「アメリカが誤った」と自己批判した様に、何の大義もなく、逆にソンミ村虐殺事件を典型とした反人権の帝国主義侵略戦争であった。
 さらに中南米諸国では70年代初頭に、選挙で選ばれたチリのアジェンデ社会主義政権をアメリカCIAが中心になって転覆し大統領を殺害したのをはじめ、ニカラグァ、エルサルバドル、グレナダ、パナマ等、アメリカの利害にそぐわない国々の政府を次々と打倒し、多くの人民を殺りくした。
 それらの集大成が、キューバ革命の圧殺化政策と非人道行為である。
 アメリカは、1961年のヒロン湾への軍事侵攻と敗北当時からはじめたキューバへの経済封鎖(米国自身がもう一つの戦争行為と自らいう)、カストロ暗殺計画(数度におよび、暗黒街の大ボス、ジアンカーゼに大金で依頼したことが発覚)、ハバナの地下道の爆破計画、農村への有害虫の大量散布等々、これが「民主主義」をいう国かと唖然とすることが次々と、いまも行われている。和解、貿易をという声も強まっているが。

 国連でキューバは圧勝
 90年代、未曾有の経済危機下にキューバは食糧・農業自給化、観光産業の自力更生政策と共に、国際法にまったく違反する「アメリカによるキューバ制裁の解除を求める決議」を92年国連総会に上程し、賛成59、反対3、棄権71で可決された。以後、反対はほぼ同じだが、棄権が大幅に減って賛成が圧倒的になり、2000年には賛成167、反対3、棄権4とアメリカは極少数派となって ひさしい。

アメリカによるキューバ制裁の解除を求める決議
  賛 成 反 対 棄 権
1992年 59ヵ国 3 71
1993年 88ヵ国 4 57
1994年 101ヵ国 2 48
1995年 117ヵ国 3 38
1996年 138ヵ国 3 25
1997年 143ヵ国 3 17
1998年 157ヵ国 2 12
1999年 155ヵ国 2 7
2000年 167ヵ国 3 4

 米国政府は、この自国の大劣勢をおおいかくすべく、「キューバの人権侵害」を対抗提案してきたが、それはまったくモラルをなくした論外の対応であった。

 人権の根本は食住衣である
 アメリカ国務省・政府は、世界人権宣言の次の条項を忘れているのか、見ようともしないのではないか。

25条 (1)何人も、衣食住、医療および必要な社会的施設等により、自己および自己の家族の健康と福利のためにじゅうぶんな生活水準を享有する権利を有し、かつ、失業、疾病、能力喪失、配偶者の死亡、老齢、または不可抗力によるその他の生活能力の喪失の場合に、保障をうける権利を有する。
 (2)母と子は、特別の保護と援助をうける権利を有する。すべての児童は、嫡出であると否とにかかわりなく、同一の社会的保護を享有する。
26条(1)何人も、教育をうける権利を有する。教育は、少なくとも初等のかつ基礎の課程では、無料でなくてはならない。初等教育は、義務とする。専門教育と職業教育は、一般に利用し得るものでなくてはならない。また高等教育へのみちは、能力に応じて、すべての者に平等に開放されていなくてはならない。
(2)教育は、人格の完全な発展と人権および基本的自由の尊重の強化とを目的としなくてはならない。教育は、すべての国および人種的または宗教的集団のあいだにおける理解、寛容および友好関係を増進し、かつ、平和の維持のために国際連合の活動を促進するものでなくてはならない。

 人間生存の第一の条件は「食うこと」であり、衣食住の最低保障である。現に第三世界の十億人以上の人々は、今日のパンに困り、水もままならない絶対的困窮下にある。
 キューバは、ソ連圏崩壊の直撃をうけて(輸出入の大半)経済は大危機におちいり、90年代前半は「犬が街頭で餓死した」といわれたが、人間は一人も餓死せずに最低生活は保証された。
 この「革命いらい最大の危機」の中でも、教育と医療は基本的に無料制度がつづけられた。中南米では唯一つ、世界的にもまれである。いやその中でもチェルノブイリ原発被災児童を1989年いらい毎年1回120-150人を数回ずつ無料でうけいれつづけ(かなりの治療費がかかる)、なおかつ中南米諸国から医師、芸術、スポーツ選手などの研修、研究、訓練を同じく無料でうけいれつづけている。そういう国は、世界にあろうか。
 アメリカ自身、医療では保険にかかれない貧困者が4千万人以上いるのである。

 キューバの限界とある自由さ
 その一方、キューバには、結社、集会、出版、デモの自由は一定に制限されている。だがそれはキューバの民主主義制そのものより、前記のように超大国米国が、たえずカストロ政権転覆を、手段をかまわずつづけていることへの自衛のためによるやむをえないものである。
 キューバが、ソ連などの社会主義といかに違うか、映画「イチゴとチョコレート」を見るとよくわかる。主人公は同性愛者であり、映画の結末は、キューバを去って外国に「亡命」するというストーリーであり、その映画の輸出もOKで東京でもロングランとなった。同性愛を公然と認める国家元首も、世界でカストロぐらいだろうし、この映画に代表される芸術の扱いも他の社会主義国にはなかったことである。

 米国は理性とモラルをとりもどせ
 アメリカ外交の「ダブルスタンダード」は世界的に知られている。
 かつて世界に輝いた独立宣言の思想と精神は、20世紀後半に地におち、キューバへの対応はモラルを欠いた政治と外交の典型である。戦後日本は、首尾一貫して米日同盟を貫き、外交、軍事はことごとく「アメリカの傘の下」であった。
 が、98年度からは、国連のキューバ提案の賛成国にまわった。そして99年末には、三塚博(元外相、蔵相など)団長以下全政党代表、三菱・三井など大商社はすべてふくめてキューバを訪ね、経済交流協定等をかわした。
 今年1月には自民党の綿貫衆議院議長が、議長の肩書きで訪れカストロ首相と公式会談した。
 アメリカは、自らの利害でグローバリゼーションをすすめているが、近い隣国キューバ対策では世界でまったく孤立している。
 膨大な血を流して闘ったベトナムとも和解し、北朝鮮とも友好交渉をすすめている中で、人口1千万の小国、しかもアメリカへの侵攻などありえない国、第三世界133ヵ国会議(南サミット)の輝く旗手キューバに対する政策を180度転換することこそ、独立宣言をいまに生かす道である。
 アメリカは理性とモラルをとりもどす時である。
 
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